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blog produit par roberte_ce_soir 


by roberte_ce_soir
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Hector Zazou, "Songs from the cold seas"(CK 67068)

最近このアーティストはけっこう精力的に新譜を出してますが(ローリー・アンダーソンやジェーン・バーキンをフィーチャーした『Strong Currents Sonora Portraits』)、今日は1986年の古い音源のご紹介です(スミマセン)。エクトル・ザズーは、アルジェリア生まれのフランス人。フランス・アヴァンポップの伝説的バンドである、ZNRの元メンバーで、多種多様な民族音楽、クラシック(ミニマル)音楽を独自の視点から、エレクトロニクス、アンビエント、ポップスと融合させてきた、音楽の「交差点」のような存在です。情景が目に浮かぶような空間的、視覚的な音響づくりがなかなか心地よいです。

本作では、ビヨークや、スザンヌ・ヴェガといった女性ボーカルのラインナップのなかに、日本から加藤登紀子まで参加しています。とりわけ、嵐の海に沈んでゆく苦しみを歌った、4曲目のレナ・ウィルマークの声は鳥肌ものです。タイトルのとおり、北半球寒冷地の沿海域に伝わる様々な伝承歌を素材にして、チルアウト的な時間がゆっくりと流れています(素材収集地域は、シベリア、アラスカ、グリーンランド、アイスランド、スウェーデン、ノルウエイ、フィンランド、ラブラドル半島、シェトランド諸島、北海道など)。

純粋な現地の音源を聴きたい、というリスナーには、こうした資本主義的なリミックスは不純いがいのなにものでもないでしょう。しかし、ここに集合している諸音像は、ヘクトル・ザズー個人のイメージする、どこにもない虚構の「北」のイメージを創出しようとしていると解釈するべきです。こうした彼のアプローチの方法は、どこにもない南国をイメージした音楽を作り出したマーティン・デニーと比較することも出来るでしょう。

ちなみに彼の以前の作品には、ランボーの詩や遺言をテクストにして、サハラ砂漠をイメージしたアルバム『サハラ・ブルー』や、幻想のコルシカ音楽アルバムがあります。(incognito)

『ソングズ・フロム・ザ・コールド・シー』
1.島の乙女,アンヌカ(ヴァルティーナ)
2.海の薔薇の歌(ビョーク)
3.ロング・ヴォヤージ(スザンヌ・ヴェガ)
4.嵐の海(レナ・ウィルマーク)
5.スカンジナヴィア毛皮貿易の冒険(ビメ・サーリ)
6.つばめのごとく(ジェーン・シベリー)
7.灯台(スージー・スー)
8.難破船(キャサリン・アンド・アン・マクフィー)
9.ヤサマネイナ(加藤登紀子)
10.ヤクート・ソング(リョドミーラ・カンディ)
11.ソング・オブ・ザ・ウォーター(エリシャ・キラブク)

※ 試聴可能なトラックを含むタワー・レコードのページ
by roberte_ce_soir | 2004-03-28 10:43 | musique